東京高等裁判所 昭和34年(う)899号 判決
被告人 金玉順
〔抄 録〕
たばこ専売法第七十五条第二項は、同条第一項所定の物件を他に譲り渡し、若しくは消費したとき又は他にその物件の所有者があつて没収することのできないときは、その価額を追徴する旨規定しているのであつて、これによれば仮に所論のように製造たばこがひとたび専売公社又はその指定した小売人より正規の価格で売り出され、その価額が国の財政収入として収納されている場合であつても、その後それが公社又はその指定した小売人以外の者によつて販売されるに至つた場合には、たばこ専売法第二十九条第二項、第七十一条第五号の違反となり、その結果はその違反に係る製造たばこ没収を免れないし且つこれを他に譲り渡したため没収できないときは、その価額の追徴を免れないことは明らかであり、このことはたとえ譲受人から右物件を没収するような場合においても同断であり、譲渡人は右物件の価額の追徴を免れ得ないのである。
元来たばこ専売法の法意は、国がたばこの専売を独占し以て国の財政収入を確保するという点に主眼があることは疑ないが、他面において同法は国民に対しいついかなる場合においても均質、等価のたばこを供給し得るようにするという公共の福祉上の狙いももつており、そのためたばこの製造、販売等に関する一切について厳重な規正をすべきであるということを途としているものと解せられるのであり、且つこれらたばこ専売法に関する厳重な規正はたばこ専売に関する国の信用の維持、向上のため必要であり、それはまた結局において国の財政収入を確保するという前記たばこ専売法の主要目的にかなう所以であると解せられるのである。
すなわち、たばこ専売法第七十五条は以上のような見地からたばこ専売に関する厳重な規正が必要であるとし、犯則物件又はこれに代るべき価額が犯則者の手中に存することを禁止し、これに対し必要的没収、必要的追徴を科すべきものとし、以て不正たばこの販売等の規正をはかろうとする趣旨であることは明白であるといわなければならない。もつとも、右たばこ専売法の目的を達成せんがために必要的没収、必要的追徴の規定まで設ける必要があるか否かは立法政策により左右され得べきところであるということはいい得るけれども、既に国がたばこ専売法の目的を徹底させるためには同法に基く取締を厳重にし犯罪の禁遏をはからなければならないとし、そのため反則者に対しては必要的没収、必要的追徴の罰を科さなくてはならないと定め且つかく定めることがたばこ専売の目的達成のため必要である所以が前叙の如くである以上は、それを目して所論のように適正手続による科刑を保障した憲法第三十一条に違反するものというべき何らの理由もないことは明らかである。
(三宅 井波 土肥原)